栃木中学校公演 シゲさんレポート
2014年2月12日
公演後、生徒会副会長の石島くんのコトバにはド肝を抜かれた。抜かれ過ぎて、何を言ってくれたか覚えてないぐらいだ。でも、舞台を見終わってスグに僕たちに伝えてくれた感想には、間違いなく感激したのを覚えてる。
グッチ〜から相談があったのは、どれくらい前だっただろうか?少なくとも1年以上前だったと思う。『中学校での公演は出来ますか?』という相談だった。突然の豪速球というか、力任せのストレートだったような気がする。詳しく話を聞くと、小・中学校の同級生が、地元で中学校の先生をやっていて、その中学校でなんとか公演をしたいと言ってきた。舞台を見た先生が言ってきたのではなく、舞台に立ってるグッチ〜が最初に中学校公演を考えたそうだ。
あの頃は(今も、もちろん思いは変わってませんが)ダレかの『やりたい』というキモチには全力で応えようとしていた。それこそ『出来るか出来ないかではなく、やるかやらないか』の精神だった。それがカタチになるまでには1年以上時間がかかったが、考えたことを準備して、そこからカタチにして公演するまでの大変さを考えると、同級生という繋がりが生み出すパワーはスゴイと思った。
劇団の研修生同期の想いがカタチになった上越高田公演、熊本八代公演のように、同級生2人の想いがカタチになった栃木公演は、石島くんのコトバも含めて、グッチ〜にレポートしてもらおうと思う。
栃木中学校公演 グッチ〜レポート
メールをもらった直後、地元の栃木で中学校の教師をしている同級生、清水友晶くんに電話をしていました。『中学校で公演をするにはどうしたらいいの?』という突然の質問にも関わらず、清水くんは丁寧に学校で公演を行える仕組みを教えてくれました。『どうにか中学校でやりたい。多感な時期の中学生に観てもらいたい。』と続けると、清水くんから出てきた言葉に驚きました。『うちの学校でやろうよ!』と言ってくれたのです。まだ【イシノマキにいた時間】を観ていないのに、どんな作品かもわからないのに、僕の想いを思いっきり受け止めてくれました。ただし、会場は学校の体育館。演劇を行う環境としては決して設備が整っているわけではありませんでした。きちんと伝わるのか不安でした。それでも大切なのは環境や設備ではなく、伝えたい想いなんだと思い、改めて、シゲさんと石倉さんに『こういう環境なんですが・・・』と相談をしました。二人からは『何言ってんの!絶対やろうよ!(シゲさんは大阪弁でした)』という力強い言葉が返ってきました。もう、その一言で胸がいっぱいになりました。
清水くんは、公演実現に向け全力を注いでくれました。校長先生を始めとする先生方、保護者の皆さんを説得し、学校で公演が出来るよう奔走してくれたのです。こうして、正式に南河内第二中学校での公演が決定したのです。それが公演のちょうど1年前の事でした。
あっという間の1年でした。スタッフさんと下見に行き、いろんな方の力を借りました。今も石巻で活動されてる馬さんにも手伝っていただきました。照明、音響のスタッフさんは、限られた機材の中で、体育館を舞台の出来る環境にしてくれました。そして、清水くんとも何度も打合せを重ねました。
清水くんとは小学校に上がる前からの友人で、30年の付き合いになります。文武両道の優等生だった清水くんと、肥満児だった僕。幼稚園時代はよく遊んでいましたが、小学校の6年間は同じクラスになった事が無く、それほど仲良くありませんでした。それが中学校に入学した日、清水くんと同じクラスで、席が前後になったのが転機でした。その日、重要なプリントなどを記入し提出しないといけないのに筆箱を忘れ、前の席にいた清水くんに『鉛筆貸して』と、6年間の沈黙を破って声をかけたのが、復縁?のキッカケとなりました。
くだらないことや恋のこと、授業中二人でふざけて先生を怒らせ職員室に謝りにいったこと・・・。中学校生活は楽しい思い出ばかりでした。そんな事を思い出しながらの打ち合わせでした。
公演当日。保護者のみなさんも合わせて700人の人が観劇してくれました。2月の寒い時期に体育館での公演は、観る側にとって少し厳しい環境だったかもしれません。それでも生徒たちは集中力を切らさず、皆真剣に観てくれて、笑い、感じ、そして、被災地を想う、そんな時間が体育館に流れていました。
終演後、生徒代表の石島くんが、挨拶でステージに上がりました。力強くマイクを持ち、僕たち3人の顔をしっかりと見て、大きな声で感想を伝えてくれました。紙に書いた感想を読むのではなく、その場で彼は僕たちに伝えてくれました。僕は石島くんの言葉と、それを遠くから見守る清水くんを見て涙がこぼれました。
実は、清水くんは舞台を観る前に、生徒たちが『震災について。ボランティアとは何か?なぜボランティアをするのか?』というテーマでディスカッションをする時間を設けたそうです。観る前に考える時間を作ってくれていました。石島くんの感想は、そんな清水くんの想いからも生まれたんだと思います。とても熱い男なんです。
後日、清水くんが生徒たちから集めてくれたアンケートより、許可を取り、
石島くんの感想を抜粋して掲載させてもらいます。
『被災地の復興が進むにつれ、それとは反対に、震災のニュースが報道されることが少なくなってきました。それに伴い、私達の震災への関心がうすれていることは事実です。昨日の演劇を観て感じたことは二つあります。一つ目は、ボランティアはボランティアという言葉だけでは終わらないということです。ボランティアをする意味を聞かれると答えるのは難しいです。でも、ボランティアをすることに理由など無いのだと思います。「被災地を笑顔にしたい、元気を与えたい」などの思いが大きくなっていき、ボランティアという枠を越えて、気付けば体が自然と動いているのだと思います。二つ目は、伝えることです。演劇のように、まずは人々に伝えることが大切なんだと思います。被災した方々にとって、もっとも大切で必要なボランティアとは、募金や支援などではなく、震災を見た、聞いた人が大人になった時、子供たちに震災のことを忘れないよう伝えていくことなのだと思いました。本当にありがとうございました。』
石島くんだけではなく、多くの生徒、先生、保護者の方々が書いてくれた感想を1枚1枚読み、中学校公演が出来て本当に良かったと思いました。『今すぐ何かをする』ということではなく、まずは学校で、先生と生徒、生徒同士、家に帰ってからは家族で、震災の事、被災地の事を話すキッカケになってくれたらいいなと思います。
中学校公演実現に多大なる協力をしてくれた皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、清水くん本当にありがとう!
栃木中学校公演 制作レポート
バスケットコートが二つもある大きな体育館という今までにない条件の下、最良の状態で上演するためのプランを考えてくれた音響・照明スタッフ、石巻からの強力なサポーターうまさん、そして清水先生のアツい想いとご協力があって、生徒、保護者のみなさん合わせて700名の方に【イシノマキにいた時間】を伝えることができました。
公演終了後には、体育館出口に保護者の方向けの募金箱が置かれ、そこで集まった15,000円を支援金としてお預かりしました。支援先が決まりましたら改めてご報告させていただきます。
今回、初めて生の舞台を観たという生徒さんも多かったのではないでしょうか。この作品をキッカケに演劇にも興味を持ってもらえたらとても嬉しいです。
南河内第二中学校の生徒のみなさん、先生方、保護者のみなさん、ありがとうございました。
栃木県下野市立南河内第二中学校公演 観客700名