東京SMBC公演 シゲさんレポート
2016年3月10日〜11日
5年という時間が流れました。
これまでの公演とは違っていた気がします。4年半近く、この舞台を続けさせてもらっていますが、毎回の公演前には必ず3人で集まって稽古をします。動きの確認とかセリフを思い出すためではない稽古をします。これまでの公演は、例えば『鹿児島公演』を見てくれた人が『熊本公演』を実現したいと言って動き始め、それから1年後(早くて半年後)に公演が実現してきました。
動き始めてから1年という時間が経ってしまう事で『あの時見てもらった舞台』が、今でもちゃんと伝わるのかを考えながら稽古をします。
『あの頃の石巻を伝える舞台を見てもらう事は、今は、どう伝わるのか?どう伝えるべきなのか?』を想像します。
今回の稽古は、今までとは劇的に違っていました。同じセリフを言い同じ距離感で体を動かすので、中身が大きく変わるという事はありませんでしたが、3人の中では、これまで以上に心の動きが劇的に変わったのだと思います。
5年という時間が流れたということをシッカリと伝えたいと思いました。
今回も変わらずいろいろな人たちが手伝いに来てくれました。
舞台が決まると、いろんな人たちから『仕込みいつですか?』
と連絡が来ます。仕込みだけを手伝って、弁当を催促するわけでもなく、本番が見れなくても笑顔で帰って行く顔、仕込みから本番、バラシと手伝ってくれるいつもの顔、どの顔も見るとホッとします。
2011年、初めて石巻市の日和山公園からの風景を見た時に、正直『人がどうこう出来る事じゃない』と感じました。それから半年後、石巻の町なかでは、泥出しのニーズが、ほぼなくなり、マンパワーというのはスゴイと驚きました。町が少しづつ元気を取り戻していたように感じました。それが、牡鹿半島の浜に行くと、あの時に感じた『人がどうこう出来る事じゃない』風景が、そこにありました。
2011年の終わりには、避難所にいた殆どの人が仮設住宅に移りました。町には仮設住宅の風景が溢れていました。その風景は、2012年、2013年、2014年が過ぎても変わることはありませんでした。そして2015年になると、少しづつ高台移転が始まり、仮設住宅から出ることの出来ない人たちの『今』が伝えられる事もすっかり減っていきました。
2016年、いまだに17万人以上の人が仮設住宅や、みなし仮設で避難生活をしています。まだ、避難してるんです。あの頃とは比べものにならないぐらい『人がどうこう出来るはずの問題』だと思っています。復興予算が、自分たちが想像していなかった場所に流用されてるというニュースを聞きます。最初の頃に感じていた怒りとか悲しみという感情よりも、なぜそんなことが出来るのか?と不思議な感情を覚えます。自分が知らない間に、そんな事が行われてたら、いつか自分もそんなお金を知らずに使う日が来るんじゃないのか?と不安にも思います。5年という時間が流れ、この先は不安にも思わない時間が流れるんじゃないかとも感じました。
今回の公演は、三井住友銀行(SMBC)さんの主催でやらせていただきました。532人のお客さんが大手町のSMBCホールに足を運んでくださいました。
当たり前ですが532通りの5年という時間がありました。足を運んでくれた人には、もう一度自分の5年を振り返りながら、この先に流れていく時間を想像してもらいたいという思い、それと同時に石巻で出会った人たちや、震災後5年間、石巻を見続けてきた人たちだから伝えられる『これまでのこと』と『これからのこと』を届けたいと思い、展示会を開きました。
これまでどうしてきましたか?
これからどうしてゆきますか?
話を聞かせてもらった石巻の人たちみんなが、笑顔で『これまでのこと』を振り返って話せたワケではなく、前向きに『これからのこと』を考える余裕があったわけではありませんでした。
ただ、そこにはきっと『今』があるのではないかと思っています。
展示会を見れなかったみなさんには、是非、その時の写真と思いを読んでいただきたいと思います。
https://ishinomakitime.com/2630880.html
石巻の人、石巻と関わって繋がりを持ってきた人たちが『大切にして欲しい事』が届けばいいなと思います。
この公演が無料ご招待という形で実現したのは、震災直後からボランティア活動をされていた三井住友銀行のみなさんと打ち合わせをさせて頂いた時に言ってもらった
『5年というのを区切りにしたくないのです。』という言葉がスタートでした。
それから何度も打ち合わせとホールの下見をさせて頂き、こちらの無理をいくつも通していただきました。また、ロビーに置かせていただいた募金箱に入れてもらったみなさんの想いは、雄勝花物語の代表、徳水利枝さんに届けてきました。
http://leader2940.blog59.fc2.com/blog-entry-3679.html
改めまして、SMBCのみなさん、そして、この公演をいつも支えてくれてるみなさん、本当にありがとうございました。